AIとホンキイ・トンク

  • 2017.08.04 Friday
  • 15:32

この世紀はAI( artificial intelligence :人工知能)の世紀と謂わんばかりの勢いだが、AIに関する報道等を見聞きするうちにホンキイ・トンクという言葉を思い起こした。筒井康隆氏の短編集『ホンキイ・トンク』に収められた同じタイトルの作品名である。

 

そもそも、ホンキートンク(wikipedia)とはアメリカのカントリーミュージック等が演奏されていた場所(バー)を指していたが、後にある演奏形態(ragtime)の呼称になっていったようだ。その独特の演奏スタイルが生み出す印象からなのか、或いはよく調律されていない調子はずれのピアノが使われたという事実からきているものなのか、ホンキートンクにはこの調子っぱずれのピアノが不可欠な要素なのだ。

 

筒井康隆のホンキイ・トンクがこのホンキートンクから来ているのは間違いない。短編『ホンキイ・トンク』は、ある小国の女王が国の政策をコンピューター、しかもちょっと狂った(バグ?)コンピューター(「ホンキイ・トンク」)に任せる決断をするという物語である。そして、この「ホンキイ・トンク」が打ち出す突拍子もない政策が功を奏するという話である。

 

短編『ホンキイ・トンク』は1969年の作品で、前の年に小説「2001年宇宙の旅」がキューブリックによって映画化され、人工知能を搭載したコンピューターHAL9000が登場する。AIが少しづづ世間一般に知られるようになっていった時代である。

 

そのような時代を背景に、著者は筒井康隆流SF的観察眼でコンピューター「ホンキイ・トンク」を登場させるのである。人間に反逆したHAL9000と比べ、ガラクタと言われてもしょうがないほどの「ホンキイ・トンク」が社会で有効に機能する。著者一流の社会風刺とも、また、フリーなジャズ好きの著者のフリーな即興と取れなくもない。

 

そして今、AIはあの時代のSF世界から現代のリアル世界の存在へと進化しつつある。AIはまだまだ特定専門分野の枠内に留まるエキスパートシステム(wikipedia)が主流だが、チェス、碁、将棋の世界ではAIがプロを超える力を持ちつつある。その背景にはディープラーニング(wikipedia)という技法の進展がある。

 

そして、近頃は医療分野で画像診断の正解率がパーフェクトに近づいているとのニュースも流れている。近くの病院でレントゲン検査を受けた知人が肺ガンの可能性ありと診断され、紹介された大病院で幼稚な誤診であることが判明したという話を聞いた。こんな状況を考えると、画像診断は原則AIに任すというような制度の確立が急がれるのかもしれない。

 

社会面でも、AIは雇用の喪失を生むなどの懸念がなされている。しかし、もはや、AIはアートの分野をも含むあらゆる分野に入り込んでいくであろうことは否定できないように思われる。人間が車社会を受け入れてきたように、AI社会を前提に法、教育などを整備していくことが肝要となる。

 

上記はまるで評論家のコメントのようで面白みがないが、実は個人的にAIの導入先として推奨したい組織がある。それが行政機関である。ここで話は頭に戻る。先ずAIの能力を生かせるのは行政機関ではないかという発想があり、それが「ホンキイ・トンク」の思い起こしへと繋がったのである。

 

昨今の国会質疑、官僚・地方行政の不祥事などを見るにつけ、いっそAIを中心に据えたシステムにオマカセしては、という思いが沸き出してきてしまったのである。今や、筒井康隆がSF(妄想)した時代に比べれば、AIは使えるテクノロジーに進化した。ただ、これにより多くの議員、役人が職を失うことになるので抵抗も大きいことが想定されるのだが。

 

AIは民間にも入り込んでいくことは間違いないが、メガAIシステムの開発を目途に、一躍行政と民間が一体になってシステムの開発を目指してはどうか。行政は前例、コンプライアンスなどに重きが置かれるので業務のコンピューター化(アルゴリズム化)に向いていると思う。もっとも行政には大岡裁き的側面も必要になるかもしれないので、五大老ぐらいは残しておいた方がいいかもしれない。

 

それにしても、AIは認知科学そのものであると言えるような対象であり、齢七十のじぶんにも充分に刺激的である。晴耕雨読、悠々自適などの老後の生活を喩える表現があるが、じぶんにはほど遠く、むしろ余生もAIに頼るような生活になってしまうのだろうかなどと思いを巡らせる。

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