時の人?

  • 2016.06.24 Friday
  • 11:09

青山繁晴著『壊れた地球儀の直し方−ぼくらの出番 』 (扶桑社新書)


青山繁治氏は、かつて「朝まで生テレビ」を見ていたころに知った人物だと思う。そういう意味では結構古い。その後、時折TV番組で拝見することはあったが特別に注目することはなかった。最近、著者のトークに耳を傾けるようになったのはTVよりもpodcastとネット配信のおかげである。

 

著者は評論家ではない。著者の略歴を見れば直ぐ分かる。それにしても著者の多忙さが伺える長いプロフィール紹介である。しかし本人の現実なのだろう、特に気負いは感じられない。 自分の本意かどうかは判断しかねるが、著者は評論活動?も行っている。 じぶんは、著者の評論の是非よりもその背景に興味を覚える。著者の評論は自分の身体を使って稼いだネタを使って構成されている。この点が多くの評論家・コメンテーターと異なるところだと思う。

 

本書は普通の新書の倍もあるようなぶ厚い新書版だが、2004年刊行の『日本国民が決断する日』を改題、改稿、加筆のうえで新書化されたもの。著者の解説によれば本書は5部構成からなる。第一部イラクの現地取材、第二部アメリカの世界戦略の転向とアジアの将来、第三部米朝戦争シミュレーション、第四部真実の日米関係の姿、第五部日本の現代政治の果たしてきたこと、の5部である。

 

著者が ”ぶと新” と称するこの新書は厚いばかりでなく中味が濃い。イラク戦争直後の突撃取材の内容は驚異的である。一般に報じられているニュースだけでは知れない事柄が著者の命がけの体験を通して伝わってくる。さらに戦争が単純な勧善懲悪で語れるものでないことを改めて教えてくれる。米中戦争のシミュレーションは、ここまで書いてしまっていいのだろうかと思わせる内容だ。先方が百も承知だとすればゾッとする話である。

 

著者が2004年に『日本国民が決断する日』 の中に書き記した日米関係、中東問題、東アジア情勢等の悩ましい問題は現在も変わらず存在する。さらに、著者が冷戦終結後に始まったとみる「元の状態に戻ろうとする動き」は2016年の現在も未だ脈動を続けているように思われる。 故意に分割、統合されたものが元に戻ろうとする動き。著者は当時、それがヨーロッパから始まりアジアへ向かおうとしていると読んだ。現実に、中東はカオス状態で中国、朝鮮情勢は予断を許さない状況になってきている。

 

著者は1996年2月に発生したペルー日本大使公邸人質事件に絡む取材における社内外との確執で共同通信を退社する。あの時、フジモリ大統領の兵はすでに降伏した少女を強姦し手足を切り落としたのだという。 この件は報道されることはなかったが、 公正な裁判にかければフジモリ大統領の政策が批判されることは必然で見せしめにするための虐殺だった。日本は瞞された、と著者は見る。

 

著者はこの人質事件を機に共同通信を退社し、三菱総研を経て2002年4月、独立総合研究所(独研)を創立した。しかも、著者は「 独研は会社だけれど、営利は追求しません 」と名言する。そして、その心は「自分で食っている組織だからこそ、言いたいことが言える。報道機関は言いたいことが全てです。それを実践していることだけが、国民の利益になります」と弁明する。著者は龍馬の亀山社中を仰ぎ見る。

 

この国には「国士」という言葉がある。著者はまさに「国士」たらんとしているのだろうか。 社名の「独立」にはいかなる借金もなくインディペントで行くということと、個人、有権者の自立によって祖国のほんとうの独立を目指すという意味を込めているのだとう。これが著者の活動の原点なのだろう。

 

この著者の在り方には個人的に共感を覚える。著者は、本意ではないかもしれないが、世間的には「右」と見られているのだろう。じぶんも、どちらかと言いうと、「右」よりの考えの方が理解しやすい。「左」の考え方に反対と言うのではなく、じぶんにとって 「左」 の方が分かりにくいのである。ちょっと乱暴な表現かもしれないが、「右」は「改善」で「左」は「改革」という考え方なのではないかと思っている。著者も改善派ではないかと推察するのだが。

 

それにしても、著者と某都知事の気質の違いに唖然とする。著者は政治家たらんとする意志はなさそうだが、その志は政治家向きではと勝手に思いを巡らす。個展(絵画)の計画もあると聞く。本当の意味でユニークな人物であると思う。ますます注目のキーマン_時の人であると確信する。

 


 

壊れた地球儀の直し方−ぼくらの出番

2016年6月 扶桑社発行(amazon

 

著者 青山繁治

1952年、神戸市生まれ。慶大文学部中退、早大経済学部卒。共同通信記者として昭和天皇吐血など歴史的スクープ連発。三菱総研に転じたのち日本初の独立系シンクタンク独立総合研究所の代表取締役社長・兼・主席研究員。熱血先生と呼ばれる近畿大経済学部客員教授(国際関係論)のほか東大教養学部特設ゼミ、防衛省幹部研修、総務省消防大学校、関東管区警察学校でも教鞭。公職は無償を原則に、内閣府原子力委員会原子力防護部会専門委員、文科省参与、海上保安庁政策アドバイザー、経産省総合資源エネルギー調査会専門委員、NSC創設の有識者会議議員、消防審議会委員など。国内外で第一級専門家として認知された分野は危機管理、外交・安全保障、資源エネルギー安保、政治論など類例なき幅広さ。「ザ・ボイス」(ニッポン放送)、「虎ノ門ニュース」(CS放送)、「TVタックル」(テレビ朝日)など番組参加が圧倒的人気。連続5時間前後の「独立講演会」も毎月、自主開催。会員制レポート「東京コンフィデンシャル・レポート」(TCR)を16年超、配信。著作に『ぼくらの祖国・新書版』『ぼくらの真実』(扶桑社)、「死ぬ理由、生きる理由」(ワニ・プラス)、純文学の『平成』(文藝春秋)など。趣味はJAF公式戦に参戦中のモータースポーツ(A級ライセンス)、水泳、映画。配偶者は日本女性初の大型船船長の資格を取りメタンハイグレード研究で世界の特許を持つ青山千春東京海洋大准教授。子息二人。愛犬はポメラニアンの繁子。2500万超アクセスのブログは「ON THE ROAD」(shiaoyama.com)

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