失われた古代史

  • 2016.04.21 Thursday
  • 21:06
ケン・ジョセフ著『失われたアイデンティティ 』(光文社)

十年ほど前に購入した本だ。本棚の整理中に目について読み直してみた。とても興味深く刺激的な内容である。この手のモノは青年期に興味を持って読んで結構愉しませてもらった。世間的には裏の歴史・セオリーと呼ばれるものだと思うのだがある種の説得力を持っている。個人的には裏のモノも表のモノと同程度に評価している。少なくともバカにしたことはない。

よくエセ科学(疑似科学)と言われるが、じぶんは全ての科学の分野がエセっぽい要因を持っていると考えている。何が表で裏かというのは時代の社会的背景によるのではないかという気もする。本書は本当の日本人のルーツを知らなければならないと提唱する。そして日本人に元気がないのはアイデンティティを喪失しているからだという。

今、東アジアでは歴史問題で波風がたっており、近現代史に異常なほど注目が集まっている。これはこれで研究・検証してもらいたいとは思うのだが、併せて紀元前の古代史をも研究・検証すべきではないかと考える。虐待の歴史は千年忘れないと言ったお隣の大統領がいるが、それならば寧ろ自分たちの歴史を一万年単位で考え直してみてはどうだろうか。

息子たちがまだ小学生だったころ、夏休みにキャンプで青森県の十和田湖に行ったことがある。帰りがけに、じぶんの好奇心から、新郷村のキリストの墓に寄ってきた。本書を読んで、簡単にトンデモ話では済まないのではないかとそのことを思い出した。日本、あるいは日本人というものは歴史的に決して特別な存在ではないという著者の主張には耳を傾ける価値がある。当の日本人がそう考えたがるところがあるからである。

そもそも人類の起源はアフリカでありグレートジャーニーの末に世界に広まったとされる。であるならば、極東最果ての地に固有のピュアな人種など誕生するわけがない。次の著者の提唱も現実味を帯びてくる。
 
 日本の原点は、あなたが信じているような「単一民族国家」homogeneous nation ではなく、「多民族共生国家」multi-ethnic nation です。また、日本人は本来の「仏教徒」Buddhist ではありません。「隠れキリスト教徒」The Hidden Christian と言った方がいいのです。
 仏教より早くキリスト教が伝来し、飛鳥・奈良・平安時代の日本にはさまざまな人々が住んでいました。日本人はもともと「国際人」cosmopolitan だったのです。空海が唐の都・長安から持ち帰った「教典」texts は仏教の経典ではなく、景教の「新約聖書」New Testament でした。そしてザビエル Frsncis Xavier は、日本人がすでに「デウス」(神)を知っていたので驚いたのです。ですから、日本人がこうした自分たちの「本当の姿」を知れば、日本は必ず復活 rebirth し、あなたもきっと元気になれるのです


古代史の世界は想像以上に人間の移動があり文化の交流があった ということである。今の日本が置かれた国際状況を考えると、近現代史もさることながら古代史の検証が外交問題解決の糸口になりはしないかという期待が出てくる。この島は大陸の人々が最終的に ” 何かを求めて ” 辿り着いた地ではなかったのか。大陸からはじき出された人々によって築かれた国、それが日本ではなかったのか。そこでは大陸の表の中華思想と相容れるはずもなく、危険で豊かな自然の中で強く静かな風土・文化を作り上げてきた。

この当たりになると個人的な思い入れが強くなってくるのだが、「この国は辺境のコミュニティとして静かに在る方がよい」 というじぶんの願いもこの新しい歴史観と共鳴するのではないかと思えてくる。と言って鎖国を推奨しているわけではない。交流は自然に、そして時に応じて我がルーツの国々に必要なフィードバックをするのが良い。著者等が行っている活動のように。

著者のルーツはアッシリアで、そして聖徳太子の治世に活躍した秦氏 Hata people のルーツもアッシリアにあるのだという。アッシリアとはイラク北部辺りの地域で、紀元前10世紀頃全オリエントにまたがる世界帝国を築いた。著者も秦氏 Hata people もその末裔だというわけだ。そこで、日本の中にこの血筋の人たちが少なからずいることになる。雅楽の東儀家のルーツも秦氏らしい。

さらに著者は天皇家の公然の秘密に触れる。2001年12月、天皇誕生日を前にした記者会見の席上で、陛下自らが天皇家はその昔韓国とゆかりがあったと発言されたという。翌年開催のFIFA日韓ワールドカップに配慮された発言と思われるが、日本のマスコミにほとんど無視された。じぶんもはっきりとした記憶がない。しかし、古代史が本書のようであったとしたら、東アジアは境界の曖昧なエリアで人的交流も現代より自然であったと想像できる。天皇家が朝鮮半島にゆかりがあったとしても変ではない。

現在の東アジア情勢を考えるには、近現代史だけから見るよりも古代史を通して近現代史を見る方が、急がば回れではないが、問題の核心に迫れるのではないだろうか。本書を読み終えてそんな感想を持った。中韓と日本は何故こうも対立し続けるのか。その争点が70年ほど前に終わった戦争に関わる歴史問題であり、しかも当事者たちではなく何も知らないその子孫達が熱く叫び続けているのだから奇怪である。近現代史をどんなに詳細に吟味してもこの問題の解決につながるような気がしない。

また、本書には国内外での著者等の活動(JET(日本緊急援助隊))も紹介されている。その中で、日本の被災地(阪神大震災、有珠山噴火、新潟中越地震)における非常識な役所の対応なども記述されている。東日本大震災のときは被災者同士の助け合い、自衛隊・警察・消防・米軍などの活躍が表向きに注目されてあまり表沙汰にはならなかったが、自治体の働きはどうだったのだろうか。

そして進行中の熊本地震だが、今日の時点でまだ物資が十分に被災者に届いていないとの報道がなされている。予想を越えて震源が広い範囲に拡散して今までにない内陸地震の様相を呈してきているために、救援体制の準備も予想よりも随分と遅れてしまっているのかもしれない。何度も立て続けに震災を経験しても体制が追いつかないという感じだ。困ったことに、ちょっとした出来事に対するネット上の過敏な反応だけが目立ち、世間を苛ただせる。

 構造改革 structural reform 、行政改革 administrative reform 、教育改革 educational reform など、いろんな「改革」reform が叫ばれていますが、いちばん大事なことは、先が見えなくなったときには原点 roots に戻ることです。
 自分たちが、この地球上にどのように存在しているのか? 日本人と日本の国のあり方とはなにか? という原点がわかれば、がんばる目的 purpose は見えてきます。元気が出てきます。そうすれば、必ず道は拓け、未来は輝きます。


この著者のメッセージが 、これも回り道になるかもしれないが、もっとも確実に強い国そして民を育てる手立てなのかもしれない。青年海外協力隊に参加することが頭をかすめたこともあったあの頃から半世紀が経つ。社会のお役に立てないまでお荷物にならないようにと想いながら9年になる。まだ乱の時代は始まったばかりと感じながら、せめて祈る力を身につけたいと願うばかりである。
 
失われたアイデンティティ
失われたアイデンティティ
発行  光文社(
amazon) 2005年6月 

著者 ケン・ジョセフ
1957年東京都生まれ。米国カリフォルニア州バイオラ大学大学院卒。1979年ロサンゼルスに、1989年東京に国際ボランティア組織を設立。現在は「日本緊急援助隊」(JET)を組織して世界各地の被災地でボランティア活動で活躍。キリスト教宣教師として太平洋戦争後来日した父の影響から、景教研究科として、これまでいくつかの著作を発表してきた。

   
 

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