まだまだ悟れない ”死”

  • 2016.01.26 Tuesday
  • 18:33
デビット・ボウイ、そしてハリーポッターのスネイプ先生ことアラン・リックマンの訃報で新年が始まった。どちらもじぶんと同世代だった。昨年買って机の上に置いたままになっていた立花隆著『死はこわくない』を読み始めた。

死はこわくない死はこわくない
2015年12月発行
文藝春秋(amazon

著者 立花隆
1940年長崎県生まれ。64年東京大学仏文科卒業、文藝春秋入社。66年退社し、67年に東大哲学科に学士入学。在学中から評論活動に入る。74年の「田中角栄研究」で金脈追求の先鞭をつけ、社会に大きな衝撃を与えた。その徹底した取材と卓抜した分析力による文筆活動で菊池寛賞、司馬遼太郎賞を受賞。著書に『宇宙からの帰還』『脳死』『サル学の現在』『天皇と東大』『がん 生と死の謎に挑む』『読書脳』『四次元時計は狂わない』のほか多数。


読み始めて、内容が前に読んだものとダブっていることに気づく。元々、NHK番組制作の取材記録で、昨年の「文藝春秋四月号」にNHKチーフプロデューサー岡田朋敏氏と立花隆氏の対談が掲載されている。参照:臨死体験を科学する (03/23)

このテーマは個人的にとても興味深いものであり、特に著者が立花隆ということで興味が増した。じ猫ビルぶんにとって、ノンフィクションライターと言えば立花隆の名前が一番に浮かぶほどになじみの深い人物だ。勤務していた会社の近所に事務所(猫ビル)あって、何度か近くでご本人を見かけたこともあり、勝手に身近な存在に感じている。

立花氏の作品の根底には、これはどこかで著者も語っていたことだが、「好奇心」があるように思う。身の回りにある自然、社会とは一体何なのか、そして自分がどこから来てどこへ行くのか。著者はこれらに突き動かされてノンフィクションライターになった。

この好奇心はじぶんにも当てはまる。社会人になって生活に追われながらも、自然・社会の構造と機能に対する好奇心は消えなかった。ただ、今、著者がこのタイトルの本を書いたということは、自身の療養体験、そして年齢が強く働いているように思われる。

著者は1940年生まれなので、じぶんと七つ違いである。じぶん自身のことを考えても、七十歳前後になれば ”死” に対する不安を身近に感じるようになるのは間違いない。『死はこわくない』は、この著者の不安と、生来の好奇心によって生まれたものに思えてならない。

本書の中で、著者は、今評判の東大医学部付属病院救急部の矢作直樹氏の言動 −死後の世界が存在するとTV番組等で主張− を批判する。ただ、じぶんは矢作氏の主張に対し白黒の判断をしていない。「あの世」の話は、未だ信じる信じないの対象と思われているが、個人的には最終的に宗教と無関係のテーマだと考えている。

著者の「あの世」に対する心情は理解できる。可能な限り論理的/合理的な解答を追及するするというのが著者の信念だと思う。このことは、著者の文系理系の違いを問わない取材の在り方にも表れている。

そして、哲学者ヴィトゲンシュタインの「語りえぬものについては沈黙せねばならぬ」を挙げて、死後の世界は語りたい対象ではあるが、まさに語り得ぬものであり沈黙しなければならないとする。

じぶんも著者のこの姿勢に大変共感を覚えるが、著者のようにきれいに割りきれていない。これは七つの年齢差だけではない。おそらく、人生修行の密度差によるものだろう。

著者は、24年前のNHK番組「臨死体験 人は死ぬ時何を見るのか」、そして2014年の「臨死体験 死ぬとき心はどうなるのか」の制作のため、二度にわたり欧米の第一人者たちの取材を行った。この取材も著者の論理的/合理的な精神が貫かれている。

そして著者は、最新の科学的見解に基づいて、臨死体験は人の死の直前に衰弱した{脳}が見る「夢」に近い現象であると結論づける。

 人間の心の平安を乱す最大の要因は、自分の死についての想念です。しかし、今は心の平安を持って自分の死を考えられるようになりました。結局死ぬというのは夢の世界に入っていくのに近い体験なのだから、いい夢を見ようという気持ちで人間は死んでいくことができるんじゃないか。そういう気持ちになりました。

 臨死体験は脳が最後に見せる夢に近い現象ですから、いい臨死体験ができるように、死に際の床をなるべく居心地よくしておくのが肝要です。臨死体験の研究が進めば、どういう環境に置かれたとき、人はハッピーな臨死体験・臨終体験ができるのかといった知見がもっと集まるでしょう

本書には、講演で看護学生に語った内容も記述されている。著者の目は死の最前線にも向けられており、社会的課題である尊厳死についても問題提起する。「死」は医療、科学、宗教を巻き込む大問題になると改めて感じた。さらに、上記引用の下線部分は、新たな医療倫理の必要性が問われる重要なメッセージであると考える。

関連投稿:死後の世界はあるか (2011/12/05)

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